原寮のハードボイルド小説ですね。沢崎シリーズ第一弾です。
ハードボイルド小説の中でも、そこそこの問題児です。いわゆるチャンドラー型ってやつです(いわないか?)
今じゃ全シリーズ読むくらい、この沢崎に嵌っている僕ですが、初めて読んだときは最初の50ページで投げようかと思ってしまいました。両切りのピースを呑んだり、規定以外の報酬を受け取らないことを強調したりと、やりたいことはわかるけど、いちいちカンに触るんです。なんだよ、この無駄なカッコツケ君は、先生の前で堂々とタバコに火をつける中学生ですかコノヤローみいに思うんです。
ところが、しばらく読み進めていって、この沢崎の調子に慣れていくと面白い。著者自身がチャンドラーのファンなので、それっぽい言い回しがふんだんに出てきます。カンに触るようなセリフや独白も、慣れてしまえば格好いい。ぐんぐん読めます。
もちろん内容もいい。話は二転三転し、かといって長くもなく、序盤から終盤まで緊張感が保たれています(アクション部分を入れるのはどうかと思ったけど、まあ少しだし)。そして、ここぞという時に放たれるセリフや独白が胸を打ちます。特に最後のくだりが素晴らしい。
チャンドラーのファンならチェックしても損はないかと。でも、沢崎はマーロウとは違うんだよな。何というか、こっちのほうがわかりやすい。その分、親しみや共感が湧きやすいんですよね。慣れないと「オイオイ」って突っ込んでしまうけど。
他に難点をあげるとしたら、新作が全然でないことか。二十年で五冊ってどうなん。
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